私は、東京の4つの街で1人暮らしを経験しました。
最後の生活を送ったのが、台東区上野。
上野での生活は、寝る間を惜しんでバイトに行き、そして遊んだ日々でした。
そんな上野を離れて5年。
今なお色濃く残る、たくさんの出会いがありました。
それぞれ事情を持って日本にやってきた彼ら。
上野に住んでいなかったら、出会っていない彼ら。
彼らは今、どこで何をしているのでしょう。。。
Fromケニア@湯島

ケニア出身のKと出会ったのは、アメリカ出身の、自称「靴のデザイナー」が経営する、BARとクラブの中間のようなお店。
御徒町から湯島に入ってすぐの路地、ビルの地下にありました。
朝まで営業しており、何度もその店で酔い潰れましたが、自宅までは自転車で5分。
いつも最後の力を振り絞り、不忍池を早朝ランニングする人とすれ違いながら、帰宅していました。
女性の店員がいた中で、唯一男性の店員で新しく入ったのが、Kでした。
Kに出会った日、どうして日本に来たのか聞いてみると、陸上の選手だというのです。
ケニアで出会った日本人に、日本の実業団に入れと誘われて来たけど、来たばかりだからバイトをしているとのこと。
その後、1週間程経ってお店に行くと、Kはもうお店に居ませんでした。
突然来なくなってしまったらしく、オーナーも全く連絡が取れないとのこと。
私も連絡しましたが、やはり繋がらず、Kとはたった一度会って話しただけでした。
後から思うと、陸上選手という話も本当だったのか嘘だったのか。
でも、夢追い人の憧れの都市、東京。
彼の話が本当で、陸上選手としてどこかで活躍していて欲しいなぁ。。。と思います。
嘘のような真実も、真実のような嘘も。
両方が溢れている、それが東京。
どちらを信じるかは、自分次第です。
ところであのお店、今でもあるのかなぁ。。。
From中国@上野駅

Jとは安い恋愛小説のような出会いでした。
上野駅で、絵に描いたようにキョロキョロと道に迷っていたJに声をかけ、仕事の面接があると言う、仲町通りのお店まで案内することに。
連絡先を交換して、後日食事した時に、日本に来た理由などを詳しく聞きました。
Jは中国で、日本から来た留学生の女の子と付き合っていたそうです。
最初は彼女に、「中国の男性が大好き!」だと猛アタックされたそうですが、そのうちJの方が彼女に夢中になっていたとか。
彼女の留学期間が終わると同時に、一緒に日本に来て同棲していたらしいのですが、1ヶ月も経たないうちに彼女は他の中国人と浮気をして、別れることになったというのです。
日本語は彼女のおかげでペラペラでも、読み書きは全くできないとのことでした。
Jは「日本に行くなら帰ってくるな!」と言う、親の反対を押し切って日本に来たらしく、今更帰れないし、仕事も見つけなければいけないと、頭を抱えていました。
その後、しばらくしてJは浅草の中国料理のお店に無事就職。
お互い都合のいい時に会う関係になり、時折Jの働くお店に、食事しに行ったりもしていましたが、だんだんと疎遠になり、いつの間にか会わなくなっていました。
彼は今でも日本で頑張っているのでしょうか。
広い東京の空の下、新しい愛を見つけていて欲しいものです。
Fromフランス@末広町

秋葉原と上野の中間にある末広町。
そこで、買い物の帰りにすれ違ったのが、フランス人の彼でした。
「タイプだから声をかけたんだ」と、とても爽やかに英語で声をかけて来た彼。
フランスの人と話すのは初めてだったので、私も興味を持ちました。
上野公園まで一緒に歩こうと言う話になり、私は自転車を押し、20分ほど歩きながら話をしました。
家族で日本に観光にきていて、1ヶ月ほど滞在するとのこと。
上野公園についてからも、ベンチに座り色んな話をしたんですが、だんだんと話がおかしな方向に。
日本とフランスどっちに住みたい?とか、子供は何人欲しい?とか。。。
私も英語が得意なわけではないので、勘違いしてるのか?と何度も思いましたが、確実に話は結婚前提の内容(笑)
なんだか訳のわからないまま、その日は別れ、2、3日後にまた上野公園で待ち合わせ、食事に行く約束をしました。
そして当日、待ち合わせの場所に行くと。。。彼はちゃんと待っていました。
でも、浮かない顔の彼に、どうしたのか尋ねてみると、お母さんの具合が悪くなり、2、3日中にフランスに帰国しなければいけないことことでした。
正直、胡散臭いと思いました(笑)
そして彼は続けました。
「でも、君のことを母に話したらとても喜んでいたよ、結婚式は日本とフランスの両方でしよう」
「もし君が希望するなら、君のママもフランスで一緒に暮らそう!」
今思えば、私はどんな顔をして聞いていたのだろうと思います(笑)
でも、彼の真剣そのものの顔に、なんだか突っ込むこともできませんでした。
そして、帰国したら連絡すると、アドレスを交換して、彼は去って行きました。
母の具合を見て、フランスへの航空券を送ると言って。。。
何日かして、彼からメールが届きました。
「今、父の持っているビルを自分が引き継ぐのに忙しいから、落ち着いたらチケットを送るよ、愛してるよ」と。
友達に笑い話で話すと、
「でも、これがマジの話だったらどうする?外国人って情熱的だからありえるかもよ!とりあえず、情報なさすぎるから、手紙送るとかなんか言って、住所でも聞いてみたら?」
ってな話になり、住所を教えてと、メールを送りました。
そして。
それ以降彼から連絡は来なくなりました(笑)
本当に、今思い出しても人生で一番訳のわからない出来事でした。。。
彼は詐欺師で、この後にはシナリオがあったのか?
もしくは、まさかの本気だったのか?
住所を聞かなかったら、今頃私はフランスの空の下、、、いや、ないない(笑)
お気づきかもしれませんが、もう名前さえ覚えておりません。。。
でも、不思議な出来事でしたが、少しも嫌な気分にはならなかったし、彼を悪い人間だとはどうしても思えませんでした。
彼と過ごした、たった2日の数時間は、私の恋愛経験に入れてしまいそうになる程、楽しい時間でした。
また、日本に遊びに来てくれることがあるといいなぁ。
肌に合う街、上野

1人暮らしをした8年間で、一番長くいたのが上野でした。
間違いなく、私は人生で一番濃厚な時をこの街で過ごしました。
ここには書ききれない、たくさんの出会いと別れ。
酸いも甘いも、たくさん経験した場所です。
一人暮らしは、いやでも自分と向き合う時間が長くなる生活。
「住めば都」と言いますが、肌に合う場所がそれぞれ違うはずです。
私には、上野がとても肌に合っていました。
肌に合う場所で自分と向き合う生活は、人生を豊かにし、大きく自分を成長させてくれることでしょう。
その時に出会う人は、その時の自分にとって、何かを教えてくれる必要な人です。
それがどんな人であっても、どんな些細な出会いであっても。
皆さんも東京の肌に合う街を見つけ、自分とゆっくり向き合って見てください。
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